「チャット」という食べると覚醒作用のある草があり、エチオピアでは嗜好品として売られている。この国の人の所得から考えるとけっこう割高で一束80エチオピア・ブル(日本円で200円)くらいするのだが隙あればチャットを頬張って口をモゴモゴさせており、200円もするのだから葉っぱを全部食べるのかと思いきや可食分は新芽だけのようで、摘みきったら道だろうと宿の敷地内だろうと構わずその辺に捨てるのだ。コスパが悪すぎる。実際に食べてみると苦くて「今草を食べている」以外の感想は浮かばず、さらにその覚醒効果はほとんどないらしく同じ値段でコーヒー10杯はいけるのでこっちを選ばない理由がわからない。捨てられた草はどうなるのかというと、人間が寝静まった深夜に野ヤギが宿の敷地内に入りその草を食べるのだ。翌朝、食べ残した茎の部分と大量にかました彼らの糞の掃除をする。どうせ掃除をするなら、はじめから草をゴミ箱に捨てれば良くない???ヤギに餌として与えたいなら敷地外に捨てたほうが楽じゃない???ヤギが草を食べている間はその咀嚼音や鳴き声がうるさくて堪らず何度も深夜に目が覚め、そのうるささに初めは暴動でも起こっているのかと思ったぐらいだ。
こういうのを異文化として理解することはとても大事で、海外に行った時はそれを楽しむのも一つなのだが、エチオピアに関しては滞在が2週間ほど過ぎた時点で、「わけ分からないのがエチオピアだ」と解釈することでどんな驚きにもすんなり受け入れられることに気が付いた。
さらに、この国で感じるストレスに関しては自分の心の中に口うるさいおばちゃんを召喚することでそれを溜め込まずに外へ放出することが出来た。おばちゃんといえば自分は図々しくいるくせに、身近な人には「みっともないからやめなさい」を口癖のように発する自分に優しくて他人には厳しい生き物である。ここで母親と言わなかったのは、僕自身生まれてから28歳の今まで「かんはかわいいねえ〜。」と言われ続けて育ったからであり、この口うるさいおばちゃんというのはあくまで僕の想像上の生き物のことを指す。
道を歩いていると常に視野に入ってくるゴミ。「みっともないからポイ捨てやめなさい!」
用事もないのに無闇に声を掛けては後を追ってくるおっちゃん。「みっともないから挨拶程度にしておきなさい!」
水が十分あるのにシャワーを浴びない若者。「臭くてみっともないからシャワー浴びなさい!」
これらを心の中のおばちゃんに言ってもらうことで、自分の中で佇むモヤモヤを一掃することが出来たのである。このおばちゃんが全エチオピア人に備わればもう少し外国人観光客が過ごしやすくなると思うんだけどなあ。
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