バンコクの宿で一緒になったおっちゃんが、インドへの入国で税関職員に嘘をつかれて苦労した話を聞いたり、さくらももこさんのエッセイ「さるのこしかけ」でインド旅行記の締めくくりに”インド人が偉大だったのは、0の発見とタージ・マハルを建てたことだけだ”と結論づけていたことから、僕はインド入国前からすでに出国したかった。そしてこのマイナスの気持ちを後押しするかのようなデリーのナマステっぷりに、さっさと目的の場所に行ってこの国から離れようと思った。しかし、いくつかの都市を訪れ、デリーから離れれば離れるほどインドが好きになっていった。ただ、インド人の親しみやすさというか人懐っこさは、裏を返せば鬱陶しいウザさにもなるので、メンヘラ束縛女子みたいな男と出会ってからは、インド人とはそれなりの距離感を作ってうまく付き合っていこうと決めた。
そしてこの人懐っこさは子どもの絵を集める上では間違いなく弊害になることが考えられたので、極力目立たない静かな場所でやっていこうと作戦立てていた。小柄ゆとり日本人がただ普通に道を歩くだけで多くの視線を浴びるのだから、ちょっと変わった事を始めると人が群がり大騒ぎになるだろう。こうなってしまったら子どもは絵を描くどころではないし、余計な対応を強いられるのは僕なのだから絶対に避けたいのだ。
そんな心持ちでジャイサルメールの街を歩きながら子どもちゃんを探す。イケイケに「ハロー!」とか言って声をかけてくる子ども軍団は可愛いけど、この後大騒ぎするに決まっているので絵のお願いはしない。人通りが多い場所を避け、住宅街の中のさらに落ち着いた場所を歩みを進めていくと、子連れのお母さん同士が家の前でのんびりしているのを発見した。
アディティー8さい🇮🇳
ミスティー3さい🇮🇳
りっぴー5さい🇮🇳
ヘタウ10さい🇮🇳
しかし、どこから湧いて出てきたのか、噴水のごとく人が集まり、「俺にも描かせろ」と言う兄ちゃんや、絵を描いている子の親戚が見に来て僕と写真を撮りたがったり、絵を描かない子どもちゃんが他の人の紙を奪って逃げまわったりと、気がつけばカオスな状況になってしまっていた。おかげでまともに写真は撮れないし、子どもの様子は見れなくて、てんやわんやだった。
別れ際に集合写真を撮ろうとするとミスティーが放尿し始め、最後の最後まで落ち着くことがなかったこの回。このカオスっぷりは一言でまとめると本当にナマステ。避けたい状況にしっかりハマり、想像通りのインドっぽさに笑う他はなかった。
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