僕は昔話や自分の話ばっかりするおっさんが嫌いだ。さほど相手に興味がないが、僕が社交辞令で相槌をしているだけなのに、おっさんは僕を楽しませている気になり、勝手に美味い酒を飲んでいるからである。そんで、そういうおっさんに限って人の話を聞かない。
こんなおっさんはやっぱりどの国にもいるようで、コペンハーゲンのゲストハウスで知り合ったアメリカロサンゼルス出身のエリスもその部類だった。
バルデとホルへと冴えない主人公の親友で先に童貞卒業されて激怒するような下ネタジョークばかり言う洋画にいがちなキャラクターのアルメニア人と僕との4人で話していた時に、年齢差があるのは明らかだが果敢に輪の中に入ってきたのがエリスで、初めはみんなで和気藹々と自分の国についてとか、女性関係についての話題で盛り上がっていた。
しかし、途中でエンジンの入ったロスのおっさん。誰も聞いていないのに急に女性の口説き方とどんな女性を抱いたかの自慢を話し始め、さらに熱くなったエリスは、急に話題を転換して僕らにこの旅の本当の目的、パッションを持ってやりたいことはなんだと一人一人に聞いてきた。
めっ、めんどくせえ〜!と思ったが、ここはもうすでに彼がMCのトーク会場だ。バルデは仕事を探しつつ旅をしてるんだと言っていたり、ホルへは初めての一人旅を楽しみたいと言ってた。アルメニア人はちょっと何言ってるかよく分からなかった。
さて僕の番だということで、子どもが好きなこと、絵を観るのが好きなこと、旅をしながら子どもの絵を集め、展覧会を開きたいことをけっこうアツく話した。
するとエリスは「へえ、絵が好きなんだ。俺はな、、、、」と自分から聞いといてテキトーな返事をし、また自分の話をし始めた。
結局は若者の意見を聞きたいと言いながらただ自分の話をしたいだけの、エゴイストおっさんだった。
彼の事をそう思っているのは僕だけかと思っていたが、エリスが席を外した瞬間にみんなが「あのおっさん、だるいわ〜」と言っていたので安心した。アルメニア人なんか、「あんな奴らばかりなら、絶対にロサンゼルスには行かないからな。」と言ってた。
おっさんの話している間はうんこみたいな時間だったが、その苦痛を経て僕ら若者の友情が芽生えたようにも感じた。
もし、それが彼の思惑で計算のもと僕らと一緒にいたのなら、僕ら4人でロサンゼルスのビーチにダイブしようと思う。
★メモ:コペンハーゲンのスーパーで買ったパンは洗剤の匂いがする。
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