エチオピアのアディスアババにに着いた。街ゆく人の肌の色やそこらじゅうに落ちているゴミ、若者が僕を見るたび挨拶もなしに「中国人」と呼ぶあたりにアフリカにきたことを実感させられた。エジプトはアフリカ大陸に位置しているものの国民のほとんどがムスリムであることやアラビア語を使っていたことから、僕のイメージしていたアフリカとは少し異なりどちらかというと中東の国にいるような印象だった。
宿でバックパックを預け、たまたま見つけたレストランのテラス席に腰かけてコーラとエチオピア料理を注文する。テラス席といえば聞こえは良いが実際は道にテーブルと椅子を置いただけの場所であるので、通る人々の残り香を感じる程の距離感があって落ち着かない。注文したのは、店のおっちゃんおすすめの煮込んだ豆に炒り卵とカットした玉ねぎ、青唐辛子のトッピングされた料理。さらにチリソースとスパイス、バターのような謎の油が添えられていて、それらを混ぜて食べるようだ。僕はこの手の、店側に出されたものを客が混ぜる事で完成させる料理がどうも好きではない。お皿の中の見事な景観を自分の手で崩すことに耐えられないからだ。ぐちゃぐちゃにした後の皿の中はどう見ても美味しくなさそうで、同時に台無しにしたことによる罪悪感みたいなものも生まれるので、もしかしたら店側がこの思いをしたくないから仕上げを客に委ねているのではないかと思ってしまう。そういった理由で焼肉屋ではビビンバを頼むことは滅多にないし、まぜそばも食べない。なので料理で大切な仕上げは店側でやってほしいというわけだ。そして名前の分からないこの料理はこの手の料理のセオリー通り、それぞれの食材が一斉に挙手をして自己主張をするのでよく分からない味だった。
さらに後からおっちゃんにヨーグルトを出され、それも混ぜると美味いと言う。前述していなかったがこの場所は外国人が好んで行くような観光地やショッピングモールがある街の中心から20分ほど歩いたところで周りは地元の人だらけ。地方と都市を結ぶ道路以外は舗装されておらず一本道を逸れると別世界になり、お店の隣では子どもが軒先で野糞をしていた。ヨーグルトは嫌いではないが、そんなハエのたかる店で出される発酵食品には恐怖感しかなくて食べる気が進まなかった。しかし、出されたものは何でも食べるのだと言われて育った僕は「何のためにここに来たのだ」と自分を奮い立たせ、決して不衛生な場所でヨーグルトを食べる訳ではないと頭のどこかで知りつつもスプーンの先にちょぴっと乗せた白い発酵食品を口に運んだ。味は確かに僕の知るそれではあったが、汁気と酸味が強過ぎて僕の口にはあわなかったので完食を諦めて店を離れた。
このお店を皮切りにいくつものエチオピア料理に挑戦することになったが、驚くほどに美味しいものなどなくて絶望した。本当はこの話を導入にして街で見かけた物乞いと児童労働について自分の想いをアツく書こうと思ったのに、ただのエチオピア料理に対する愚痴になってしまった。まあタイトル通り考えはしたので。
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