正しい美術館での過ごし方

旅の記録

ヨーロッパ旅の目的の一つが名画を鑑賞することにあったので各国の美術館を訪れていたのだが、あれも見たいこれも見たいと絞りきれず、可能なところ全てに行っていた。帰国して訪問した美術館の数を数えてみたら20ヶ所以上もあり、自分でもちょっと引いた。「どこが一番よかった?」と友人に尋ねられ、行った場所が多過ぎた故に各美術館の記憶が曖昧で上手く答えられず、もっと引いた。何しに行ったのだ。しかし、どの絵も凄かったのはちゃんと覚えているので、それだけで僕は十分だ。前向きに言えば、次に行った時に、もう一度初めてみたいな感覚で鑑賞が出来るのでお得であろう。

とはいえ、事前にある程度は勉強をしてきたので「ふうん、これが印象派かあ。」「この絵があーでこーで、、、」と実物を目にしながら知識のある自分に酔うことが出来たのだが、聖書や神話について描かれたものについてはもうさっぱりだった。どの美術館も広く、展示数がアホみたいにあるので、別に無理せずに流し見で良いのだが、「僕、知ってますよ〜」って顔をして鑑賞していた。

この知ってます顔をするには、まず、誰も見ていない絵の前に立ち止まり、顔を近づける。(この時、少し眉を顰め、口を尖らせるとベター。)最後に腕を前に組み、数十秒に一回頷けば完璧である。

こうしているだけで周りからは博識のある人に思われるに違いないのでみなさんにもお勧めしたい。逆にやってはいけない事は、一緒にいる人に絵の解説をしているようで、自分の知識をひけらかす事である。理由はキモいからである。

では、今まで美術に無縁だった僕がなぜわざわざヨーロッパに行ってまで美術館を訪れているのか。

それは、かっこいいから。

履歴書とか、プロフィールに「趣味:美術館巡り」と書いてあるとすごく上品で賢そうで、まともな人間っぽくて、かっこいいからである。それ以上でも以下でもない。歴史が好きかと言われたらそうでもない。そもそも高校時代は世界史ではなくて日本史専攻だった。ならば、自分でも絵を描くのかと言われても、もちろん違う。中学の美術で見事に挫折し、それ以降まともに絵を描こうと思った事すらない。ただ、美術館に行って絵を見るのがかっこいいと思っているのである。

僕と同じように、絵を鑑賞する自分に酔いに美術館へ行っている人も多いはずだ。そういう人たちには、「お前は一人じゃないぞ」と伝えたい。隠さなくていい。美術館はかっこつけに最も適した場所だから。

ちなみに僕が一番テンションの上がる瞬間は、鑑賞を終えてから立ち寄るグッズショップである。

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