オートリキシャ運転手に口説かれる

旅の記録

夏にロンドンで美容師をしている友だちに会ってから約半年経った今現在まで一度も髪を切っていないので、襟足が肩に付くぐらい伸びている。僕がYouTuberなら【スパイス香る!インドでナマステ散髪!!】みたいなタイトルをつけ、ローカル美容院で髪を切る動画をアップしていたところだが、撮れ高の為の惜しまない努力と収益を得るほどの登録者数を獲得するまでの強い根気が求められ、さらにそれらの半永久的な継続を強いられるこの職業は、宿の部屋内で鼻くそをほじってそれを丸めることで1日を終える僕みたいな人間には500%向いてない。なので、みなさんがインドにまつわる動画を観ている時、次に観るおすすめ動画の一覧にナマステヘアーをサムネイルにした僕の動画が載ることはないだろう。

それに、ここまで言っておきながらそもそも髪を切る気はまだない。それだけではなく、髪の長い自分を鏡で見て「なんか、、、アトムの童の山崎賢人みたいじゃない???」と悦に入っている始末だ。こんな勘違い小柄日焼け汚ミディアムヘアー男は一刻も早くガンジス川に沈めた方がいい。もしくは両目両鼻にスパイスをぶち込んで、一晩と言わず一生寝かせておくべきだ。

なので僕の髪はぼさぼさに伸び放題なのだが、意外とインド人には気に入られた。「男と女どっちだ」とおっさんに尋ねられたり、「I like your hair!」と褒められたりする。

そんななか、駅前を歩いているとオートリキシャドライバー(インド版バイクタクシー)が声をかけてきた。この人種は、決まって観光客を見つけては法外な料金で目的地まで送迎をする詐欺師であるので、僕は歩調を合わせながら執拗に誘ってくる彼を軽くいなしていた。たいていのドライバーであれば、僕が英語わからないふりしてヘラヘラしていれば諦めるのだが、彼だけは違った。無視する僕をさらに無視して話し続け、「髪の毛は長いと美しい人生。短いと意味のある人生なんだぜ」と僕を深い哲学的な誘い文句で口説いてきた。

やかましいわ!と思わずツッコミを入れたくなるようなナマステ発言である。どっちも良い意味なら、髪の長さなんてどうでもでもいいじゃん!とも言いたいところだったが、それよりも彼のセリフに粋みたいなものを感じてしまい、僕は一瞬足を止めてしまった。「やっぱ英語わかるじゃん!」と図星を突かれて恥ずかしい思いもしたが、だからといって乗るわけではない。

ただ話のネタにはなったので、代わりに座布団1枚ならぬ、ナン2枚を差し上げたいと思います。

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