タージマハールとガンジス川に行っておけば良いかなとスタンプラリー感覚でインドに向かい、さくっと次の国に行こうと思っていたのだが、蓋を開けてみれば7都市も訪れていた。各地を訪れるたびにインドの魅力に惹かれていき、牛のフンに鼻をつまんで過ごした約4週間で分かったことは、インド人は本当に毎日カレーを食べるという事。彼らからしたらカレーとそうでない料理との違いがあるようで、「これは黄色じゃないからカレーではない」とか、「この料理に使われているスパイスの種類がカレーではない」とか訳の分からないナマステ発言をしていたが、僕からしたらどんな食材も茶色く仕上げている時点で、それはもう紛れもなくカレーであった。ある日、Tシャツの脇の部分を嗅いだらフワッとスパイスの香りがし、自分の身体がインドに侵食されているように感じて恐怖を覚えた。
これからたくさん僕目線でのインド旅を振り返っていくが、良くも悪くも僕の心が揺らいだ時に発される言葉が「ナマステ」になってしまうのは、僕の語彙力が乏しいからであるのと、仮にインドに対して不満があったとして、一度出たその不満がダムの如く放流されて二度と元には戻せない状態になりかねないので、そこは理解したもらいたい。インド不満ダムの決壊だけは避けたいのである。前置きはそこそこにして、さっそく都市別にレビューしていく。
デリー
ほんっっっっとうにナマステ。インドの悪いところを見るには最適。悪いところを全部集めた逆オールスターみたいな。旨味を全て取り除いて苦味と青臭さのみを残したピーマンみたいな。効能ゼロのぬるくて濁った温泉みたいな。デリーの3泊は、季節の変わり目の耳鼻科の待合室ぐらい時が流れるのが遅く感じた。
オートリキシャの誘いがしつこい、用もないのにしつこく声をかけてきてうざい、街中がクラクションでうるさい、おっさんたちがたんめっちゃ吐いてる、どこ行っても人が多い、空気が汚い。街が臭い。総じてナマステ。
ハリドワール
まず一番に、青いガンジス川があることに驚いた。僕がイメージしていたのは、ネットの画像で見たバラナシの茶色く濁っているガンジス川だったのだが、ハリドワールから約1,000キロ下流にあるバラナシのガンジス川と違って、ヒマラヤ山脈の麓に位置するここのガンジス川はブルーで透き通った色をしていた。この青くて神聖な川を求めて多くの人がこの場所で沐浴をしているようだ。
僕も川の水に足をつけたが、上流でゴリゴリに洗剤を使って洗濯をしている人を見たので、いくら神聖だとはいえ口に含むことは出来なかった。流石にこれはナマステ。現地の人が、「この水はものすごく綺麗だからボトルに入れて持って帰ると良い」と言っていたが、
インドの綺麗は日本のギリ汚い
なので文字には出来ない鼻から漏れ出たような声で返事をして誤魔化した。
ジャイプール
インドのピンクシティーと呼ばれているジャイプール。街の中心部の建物がピンク色に塗装されていてかわいいが、インドらしい混沌さも相まっておしゃれさに酔う暇はない。個人的に気に入ったのは、街の景色を一望出来るナハガー・フォート。
この場所までのアクセスが悪いうえ、丘をめちゃくちゃ登るが、修学旅行キモテンション学生たちと戯れたり、ヤギと下山したりと面白かった。ナイトマーケットの一画に手相占いをしてもらえる場所があったので見てもらった。「お前は頑固だから人の話を聞け」と言われました。うるせえばか!!
ジャイサルメール
砂漠都市。ラクダに乗って夕日を見る。夜は砂漠のど真ん中で寝て、起きたら朝日を拝む。めちゃいい。素敵な日本人との出会いもあり。旅は楽しいほど、特筆すべきネタがない。
ジョードプル
ワンピースのアラバスタの舞台と言われているらしく、それっぽい時計台や城壁があった。人を乗せるくらいの大きなカルガモはおらず、人の頭頂部を目掛けてフンをする鳩がめっちゃいた。
年越しをこの地で過ごしたのだが、花火という名の大量の爆竹で激しくお祝いをし、我が身に降りかかる火薬の量にドン引きした。終わった花火を水に浸けないので、ゴミの山から不発弾が急に発射されることもあり、普通に危険だった。インド人の危機管理能力の低さにナマステと感じざるを得なかったが、こんな事を言う僕も含めてめちゃはしゃいだ。あけおめです。
アグラ
目当てのタージマハールは霧に包まれていまいちだった。仲良くなった地元のインド人の家に招待され、食事からルームツアー、さらにはお土産まで貰っちゃって、マハラジャくらい手厚い歓迎をされて至れり尽くせりだった。
女性に対して握手やハグをするのはインド的にあまり良くないらしく、男性は女性の足をタッチするのが感謝の仕方だと教わってからは、女性の足を追いかけるモンスターと化していた。ここでのエピソードは、また改めて書きたい。
バラナシ
ガンジス川は僕が思った以上に観光地化されており、日本語を使って距離を縮めようとしてくるボートやガイドの勧誘がナマステと感じざるを得なかった。流石に火葬場までは来ないかなと思っていたら大麻の誘いが来たので、「灰を鼻の穴から入れてむせ返ってしまえ!!!」と心の中で叫んだ。目の前で火葬を見ても人生観とか死生観は変わらなかった。
インドは好き嫌いがはっきり分かれるみたいなことを何度か耳にしたことがあるが、嫌いな人は、衛生面とか騒がしい感じが受け付けなかったんだろうなあ、、、となんとなく理解ができる。それに対して大声出して好きとか言ってる人は、確かに本当に好きな人もいると思うが、人が敬遠するものを好む自分が、他人から見て少し変わった人間に見えるだろうから「好き」と言っている人もいる気がしてならない。聞き手に「えー!どんなとこがいいの??」みたいな事を聞かれては「ふふっ、それはね、、、」と自分の知っているインドを吹聴して悦に浸る目論見を感じ、ちょっとキツいなあと思ってしまう(全員がそういうわけではないが)。
こんな事を言って、お前の答えはどうなんだとインドで一度も会うことの無かったゾウさんからの声が聞こえてきそなので答えるが、僕は二度とインドの観光地には行きたくない。声をかけてくる男性の9割がとにかくナマステなので。しかし、日本人というだけで得体の知れない僕を家に招待してくれたり、うざい勧誘と揉めた僕を助けてくれたり、電車内で2時間耐久絵しりとりをしたりと、僕のインド旅を彩らせてくれた地元の人たちはとってもいい人たちばかりだったので、そういう人たちにもう一度会いに行きたいという意味では、僕はインドが好きだ。人と同じように、国にも良いところも悪いところもある。なので、一番は僕がインドに行かずに彼らが日本に遊びに来てくれることかな。そして人には勧められない国ナンバー1(暫定)である。
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